SSブログ

ヴァレンタイン [二次創作いろいろ]

たとえ日本においては製菓業界の陰謀であろうと、ハジ小夜を応援するB+ファンとしては、この時期にネタをやらないでどうする!
◆というわけで、単に甘いSSです。(こちらは「続きを読む」↓から)
いうまでもなくハジ小夜ですので、それ以外のカップリング支持派のかたは、ご注意ください。

同時に「屋根裏部屋」に、以前ここで期間限定で公開したハジ小夜SS枸櫞(くえん)」を頂き物のイラスト付で再掲。

それにしても、ワードで作成した文書をそののままいれられないのは不便です。編集ページは表示されるのに、ブログにはでないのです。単に明朝→ゴシックの変換が自動でできないのか?
直接長文を入力する危険は避けたいのに~!(そう、突然消えるからですよ!)
結局、ウェブリにある「屋根裏」にいったん入れてコピーしたら、OKでした。

          ◆甘い香りに包まれて◆

星がまたたく夜空の下を、花束を抱えた青年が家路を急いでいた。
『今すぐあの人のもとに飛んで行きたい!』
そんな衝動をこらえる彼の歩調はすさまじく速く、すれ違う人々が黒いつむじ風が通り抜けたと錯覚するほどだ。
普通は「もしも翼があるのなら」という前置きがつくものだが、彼の場合は「人目を気にしないですむものなら」である。
OMOROから程近い住宅街にある見た目はかわいいが、台風銀座の沖縄らしく頑丈なつくりの白い家が彼の目指す場所だった。玄関にともる灯が長旅から戻った彼をほっとさせてくれる。

大切な人がいて、自分の帰りを待っていてくれる。

ロマの民として祖国も定住する地を持たず、各地を旅していた頃には、味わったことのない感覚だった。彼が少年時代を過ごした思い出深い「動物園」も家であったといけるけれども、小夜を置いて何日も出かけることなどなかったのだ。
もう眠っているかもしれないと、呼び鈴は押さずにポケットから鍵をとりだし、そっとドアを開ける。
「小夜~、ただいま帰りました。」
控えめな呼びかけに対する応答はなく、奥は静まり返っている。
やはり眠っているのだろう、本来の帰宅予定は明日の午後だったのだから。
それでも一刻も早く愛する人の顔が見たくて、静かに、しかしいそいそとリビングのドアを開ける。寝室のある階上にいくにはここを通る間取りになっているからだ。
消し忘れたのだろうか、リビングと一続きになっているダイニングキッチンのほうが明るい。
青年が目をやれば、テーブルの上のペンダントライトだけが灯っていて、その下の苦闘の後と、そこに突っ伏して眠りの世界をさまよっている少女を照らしていた。散らかった調理の痕跡を見れば、彼女が何をしていたかは一目瞭然である。
「小夜、こんなところで・・・!」
すぐに寝室に運ぼうと荷物を置いた彼だが、バットの上に並んでいる不揃いな物体を見つけて思わず笑みがこぼれた。

これは・・・?・・・トリュフチョコレート・・・?

「ん・・・」
ふと目を開けた少女が目撃したのは、いびつな形のチョコレートをつまんで、ためつすがめつ眺めている、なんとも嬉そうな表情の美青年だった。
「ああっ~~~っ!!」
「たたいま帰りました、小夜。会いたかった。」
失敗作を隠そうと、バットをもってあわてふためいている小夜を、長い腕が捕まえる。
「お、お帰りなさい、ハジ。帰るの明日じゃなかった?」
「用が早く済んだので、予定を繰り上げました。ジョエルがあなたによろしくと。」
「とにかく、それは返して!」
小夜が取り返そうにも、長身のハジが手をあげてしまうと、とうてい届かない。
「私にくださるのでしょう?」
「だってそれは!」
「いただきます。」
「あっ!」
トリュフチョコ・・・と呼ぶには、個性的な形のそれは小夜の目の前で夫の口の中に消えてしまった。

小夜の、変なのは形だけじゃないの・・・という心配をよそに、ハジはこのうえなく幸せそうにチョコレートを味わっている。
「おいしいです、ありがとう、小夜。ここは片付けておきますから、早くベッドに入ってください。」
寝室に追いやられそうになった小夜は、ちょっと困った顔をした。
とたんに、ぐ~~~っと空腹を訴える音が、夜のしじまをやぶる。
「小夜!もしかして、ご飯も食べないでお菓子作りをしていのですか?!」
いつもは小夜に対して甘すぎるほど甘い彼がめずらしく、語気を強めた。
「ごめんなさい・・・。だって、ハジが帰ってきたら、一番に渡したかったんだもん。」
しゅんとなった小夜を、しょうがない人だといいつつハジが抱きすくめる。
「これでは心配で留守にできないじゃないですか。こんなところで、うたた寝もだめですよ、大事なときなんですから。」
本人が気づくまえから、彼女とめばえたばかりの頼りない命を気遣っていた彼の心配はいかほどだったか・・・。小夜は彼の胸に頬をすりよせてつぶやいた。
「うん、ごめん。」
ハジは膝を床につくと、妻のいまだまったく目立たない腹部に耳を近づける。
「大丈夫、元気です。」
翼手の聴力なら、聴診器がなくても心音が判るらしい。安心した彼は、にっこり笑って、何か作りましょうと立ち上がった。

ハジが心配するのも無理はない。小夜はただでさえ、生命維持に人間以上のエネルギーを必要としているうえに、おそらく同様に大食いの未来の女王たちの分も栄養が必要なのである。
きょうは製菓材料とフルーツしか買っていなかったと青くなる小夜をよそに、有能な夫はキッチンにある材料を確認すると、シャツの袖を捲くって手際よく調理をはじめる。

おこげのあんかけと具沢山のスープ、ゆで卵ブロッコリーのサラダがテーブルに置かれると、小夜は「いただきます」をいううがはやいか、料理にとりかかっている。
香ばしいおこげのさくさくした歯ごたえを楽しんでいる彼女の様子を、満足そうに見やって、ハジは小夜が使った道具の片付けに取りかかる。
やがてキッチンに甘い香りが漂い始めた。
「何をしてるの?」
てっきり、固まってしまったチョコレートを落とすためにボウルを湯煎しているのだと思ったら、生クリームを加えて攪拌している。
「デザートですよ。」
小夜が大盛りだった料理を余裕でたらげるとほどなく、ココットに移されたチョコレートソースと、長いピックを添えた鮮やかなフルーツが目の前におかれた。
「あ、チョコレートフォンデュ!」
「温かいうちにどうぞ。」
ピックの先についた赤い果実を口に含むと、チョコのほろ苦い甘さと酸味がひろがる。
「うん、おいしい。これ、OMOROでやってあげたいな。」
姪っ子達やルルゥが喜びそうだと小夜が嬉しそうに笑う。
「そうですね。でも、明日はまず買い物ですよ。」
テーブルの角をはさんで隣に腰掛けたハジは、すっかり空になった冷蔵庫を思い出して苦笑した。
「うん。ねぇ、ハジもあ~んして。」
小夜が真っ赤な苺を差し出す。
「はい?!」
「だめ?」
「・・・いただきます。」
「~~~~~!!」
果汁に紅く染まった艶やかなくちびる・・・そのふっくらとした感触を確かめてから、ハジはピックの先の苺を咥えた。
「ハジっ!」
いたずら心をおこした本人は、すばやく階段の下まで移動している。
「着替えてきます。」

チョコレートの香りがただよう甘い夜。
階上に姿を消した彼が自分達だけに聞える音のさざなみで、小夜の耳朶をくすぐる。
「あとで、おかわりくださいね。」

                  ***終わり***

■意味も落ちもありはしない・・・汗。
つわりでほとんど食べられない人もいるんだけど、人間の女性は体重制限をうるさく言われるので、小夜たんみたく「どか食い」は厳禁です。

       

私は種の女王と自分のシュヴァリエの間にbebyが誕生しないアニメの設定に異議はないです。でも、奇跡があってもいいと思う。(理由はもちろんマイ設定で!


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コメント 4

トントちゃん

肩が痛い~とか言いながら、遊びに来てしまいました。
甘~いバレンタイン、ごちそうさまでした♪
by トントちゃん (2007-02-07 18:15) 

うさぎりんご

>トントちゃん
おそまつさまでした~。肩の痛みつらいですね、お大事に。
by うさぎりんご (2007-02-07 22:42) 

P

わぁ~~~~ん!甘い!あまいよ~~~。
うさぎりんごさん、あのイラストにはこんなステキなお話があったのですね~。う~ん。ハジいかにもやりそうなことばかりですね。
ジョエルとの用事はなんだったのかな?ハジの御仕事振りも気になるわたしです。
by P (2007-02-08 21:52) 

うさぎりんご

>Pさん
読んでくださったのですか・・・汗。砂糖が、じゃりっ? 書いた本人があきれてます。
ゴールドスミス・ホールディングスは、実は名目上はハジのものです(え?結局その設定?) で、実際に動かしてるのはジョエル。
ハジは多分、音楽活動もしてますが、多分小夜たんと一緒に世界回って慈善的なことしてる。と、漠然と考えてます。「動物園」は譲り受けて整備中。
by うさぎりんご (2007-02-09 02:22) 

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